「オウム真理教事件」麻原彰晃。
「和歌山毒カレー事件」林眞須美。
「名古屋女子大生誘拐事件」木村修治。
「光市母子殺害事件」元少年。
これらはすべて死刑事件である。
そして、
それらすべての裁判を担当している弁護士がいる――
安田好弘、64歳。
死刑事件を請け負う弁護士は少ない。〝極悪人の代理人〞〝人殺しを弁護する人でなし〞世間から様々なバッシングを受けるだけでなく、人命が奪われた事件を通し、加害者と被害者双方の悔恨や悲嘆に苦悶することになるからだ。
本作はマスコミや検察の情報を鵜呑みにし、自分たちは絶対的な正義なのだと思い込み、被疑者へのバッシングを繰り返す私たちへも疑問を投げかける。なぜ、いつも自分たちが正しいと思い込めるのか?
安田は、顧問弁護士を務める会社の事件に関連して、強制執行妨害の罪で自らも逮捕される。しかし、それでもなお彼は、自らの職責として弁護士を全うし続けたいという。
「事実を出して初めて本当の反省と贖罪が生まれる。どうしたら同じことを繰り返さずに済むのか、それには、まず真実を究明しなければならない」。
安田は、“悪魔の弁護人”と呼ばれようとも、依頼人を背負い続ける。
貧困と富裕、安定と不安定、山手と下町。凄惨な犯罪は境界で起きることが多い。安田は、こう考えている。生まれ育った環境が生む歪みを無視し、加害者を断罪することに終始することが、事件の「解決」と言えるのか。「誰が何を裁くのか?」裁判は、犯罪を抑止するために、材料を洗い出す場でもあるはずだ。安田の生き様から映し出されるのは、この国の司法のありようだ。『平成ジレンマ』『青空どろぼう』の東海テレビが放つ劇場公開ドキュメンタリー最新作。
安田好弘弁護士の主な担当事件
1971年 | 新宿クリスマスツリー爆弾事件 鎌田俊彦 無期懲役 |
1972年 | あさま山荘事件 坂口 弘 死刑(再審中) 晴山事件 晴山広元 死刑 |
1973年 | 日航機ダッカハイジャック事件 丸岡 修 無期懲役 |
1976年 | 北海道庁爆破事件 大森勝久 死刑(再審中) |
1980年 | 宮代町母子殺人放火事件 村松誠一 死刑(再審中)、村松裕次郎 無期懲役 新宿西口バス放火事件 丸山博文 無期懲役 山梨幼児誘拐殺人事件 梶原利行 無期懲役 名古屋女子大生誘拐殺人事件 木村修治 死刑 |
1986年 | 仙台老夫婦殺人事件 堀江守男 死刑 |
1988年 | 名古屋アベック殺人事件 少年 無期懲役 |
1989年 | オウム真理教事件 麻原彰晃 死刑(再審中) |
1991年 | 千葉 福島 岩手 誘拐殺人事件 岡崎茂男 死刑 |
1992年 | 市川一家殺人事件 少年 死刑(再審中) |
1998年 | 和歌山カレー事件 林 眞須美 死刑(再審中) |
1999年 | 光市母子殺害事件 元少年 死刑 |